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2022年3月5日から7日にかけて、九州のラムサール条約登録湿地を巡る鳥見旅行へ行ってきました。
今回の目的は、何といっても有明海です。
有明海といえば、シギ・チドリ類をはじめとした水鳥の一大生息地。
鳥屋としては、一度は見ておきたい場所でした。
今回は有明海沿岸から出水のツル越冬地まで、2泊3日で一気に巡ります。
普段見ている干潟とは規模がまるで違う。
大量の水鳥が集まり、干潟には見慣れない生きものが暮らし、さらに南へ行けば世界有数のツル越冬地が広がっています。
そんな九州の鳥見旅で、実際に何を見て、何を感じたのかを振り返っていきます。
5日:肥前鹿島干潟から大授搦へ
前日の夜、名古屋から夜行バスに乗り、小倉へ。
そこからレンタカーに乗り換え、まず目指したのは佐賀県の肥前鹿島干潟です。
九州に到着して最初の目的地から、いきなり有明海。
期待はかなり高まっていました。
肥前鹿島干潟で最初の鳥見

到着してすぐ、目の前をハヤブサが飛んでいきました。
普段のフィールドでも見る鳥ではありますが、遠征先で最初に見ると、やっぱりテンションが上がります。
「九州に来たぞ」という実感が湧いてきます。
ところが、肝心のシギ・チドリ類はというと、ほとんど見当たりません。
遠くにツクシガモが見える程度でした。

せっかく有明海まで来たのに……。
どうやら潮が引きすぎて、鳥たちがかなり遠くまで移動していたようです。
ハヤブサが飛ばしてしまった可能性もありますが、いずれにしても、いきなり有明海のスケールを思い知らされました。
「鳥がいない」のではなく、「鳥が遠すぎて見えない」。
普段の干潟とは、そもそも見ている世界の広さが違います。
鹿島市干潟展望館で有明海を眺める

その後、鹿島市干潟展望館へ向かいました。
建物だけを見ると少し年季が入っている印象でしたが、展望スペースから有明海を眺めると、そんなことはどうでもよくなります。
目の前に広がるのは、とにかく広い干潟。
さっきまで鳥を探していた場所も、ここから見るとさらに広大に感じます。
人もほとんどいなかったので、しばらくゆっくりと景色を眺めました。
鳥見では、どうしても鳥そのものに目が行きます。
しかし、こうして少し離れた場所から干潟全体を眺めてみると、「これだけ広い環境があるから、これだけ多くの鳥が集まるのか」と納得できます。

鹿島市干潟交流館で有明海の生きものを見る

隣の鹿島市干潟交流館にも立ち寄りました。
ここでは、有明海に暮らす生きものを実際に見ることができます。
中は小さな水族館のようになっていて、ワラスボやムツゴロウなど、有明海を代表する生きものが並んでいました。

アカエイやオニオコゼなどもいて、鳥とはまた違った方向から有明海を楽しめます。
特に面白かったのが、ガタリンピックに関する展示です。

干潟そのものを舞台にして競技を行うという、いかにも有明海らしいイベント。
干潟を「鳥を見る場所」としてしか考えていなかった自分にとっては、地域の人たちが干潟とどう付き合っているのかを知るきっかけにもなりました。
いつか実際に参加してみたいものです。
道の駅でまさかの出会い

せっかくなので、道の駅鹿島にも立ち寄りました。
普通の道の駅を想像していたのですが、そこで目に入ったのが「ゾンビランドサガ」のパネル。
佐賀を舞台にした作品なので、肥前鹿島干潟も舞台の一つになっています。
好きな作品だったので、まさか鳥見旅行中に遭遇するとは思わず、思わず笑ってしまいました。
鳥だけを追いかけている旅でも、こういう偶然の出会いがあるのは楽しいですね。
大授搦で感じた九州の鳥の多さ
続いて向かったのは、大授搦です。
正式には東よか干潟として知られる場所ですが、バードウォッチャーの間では「大授搦」の名前で親しまれています。
到着した頃にはすでに夕方だったため、この日は干潟には入らず、周辺で鳥を探しました。
そこでまず驚いたのが、ミヤマガラスの数です。

電線に大量のミヤマガラスが並んでいます。
愛知県で暮らしている自分にとって、ミヤマガラスは「琵琶湖などで数十羽の群れを見る鳥」という感覚でした。
ところが、ここでは桁が違う。
「こんなにいるのか」と、今まで持っていたミヤマガラスのイメージが一気に変わりました。
さらに驚いたのがホシムクドリです。

地元ではムクドリの群れの中に数羽いるかどうか、という感覚でした。
それが九州では、普通にムクドリの群れへ混ざっています。
同じ日本なのに、地域が変わるだけで鳥の見え方がここまで変わる。
遠征の面白さをいきなり感じました。
ほかにもカササギやハイイロチュウヒを観察。
日が暮れてきたところで、この日の鳥見を終えました。
むつごろう亭で有明海を食べる

夕食は、むつごろう亭 丸善へ。
大授搦まで来て、干潟の生きものを食べないわけにはいきません。
注文したのは、もちろんムツゴロウ定食。
ムツゴロウの甘露煮を食べてみると、これがかなり美味しい。
ご飯がどんどん進みます。
有明海では、干潟が単なる自然環境ではなく、食や漁業とも深く結びついている。
そのことを、鳥を見るだけではなく、実際に食べることで少し実感できた気がします。
食事を終え、この日は大授搦周辺で車中泊。
翌朝から、本格的な干潟の鳥見が始まります。
6日:大授搦から荒尾干潟へ
朝になり、いよいよ大授搦の干潟へ。
この日の鳥見は、今回の旅行でも特に印象に残る一日になりました。
数百羽のズグロカモメと大群のシギ・チドリ

最初に目に入ったのはズグロカモメ。
地元でも冬になると見ることができる鳥ですが、ここでは数がまるで違います。
数百羽規模で集まっている姿を見ると、普段見ている「ズグロカモメ」とは別の鳥を見ているような感覚になります。
そして、さらに圧倒されたのがハマシギとシロチドリの群れです。

数百羽どころではない大群。
ファインダーに収まりきらないほどの個体が一斉に飛び立つ姿は、まさに圧巻でした。
そこへハヤブサが突っ込み、群れが一斉に舞い上がります。

干潟全体が一瞬で動き出すような光景でした。
ハマシギが「干潟の宝石」と呼ばれる理由も、こうした大群を見れば納得できます。
クロツラヘラサギの相互羽繕い

2時間ほど鳥見をしたところで、有明海の鳥見で知られているNさん親子と合流しました。
地元を知る方と一緒に見ることができるのは、本当に心強いです。
スコープを覗きながら鳥を探していると、クロツラヘラサギの群れが飛来しました。
しかも、かなり近くまで来てくれます。
しばらく観察していると、そのうち2羽が相互羽繕いを始めました。
ヘラサギ類ではよく知られている行動ですが、実際にじっくり観察できるとやはり嬉しい。
鳥の姿を見るだけでなく、行動まで観察できる。
これも遠征の醍醐味です。
その後、ダイシャクシギの群れも飛来。

地元の干潟では、この規模の群れを見ることはほとんどありません。
「やっぱり有明海は違うな」と、何度目か分からない驚きを味わいました。
鳥だけではない、大授搦の生きもの
せっかくここまで来たので、鳥だけでなく干潟の生きものも探してみました。
3月ということもあり、多くのベントスはまだ活動が少ない時期。
あまり期待していなかったのですが、地表をよく見るとアズキカワザンショウが大量にいます。

これは嬉しい。
普段の干潟では見ることができない種類だったので、鳥を探していたときとは別の意味でテンションが上がりました。
鳥屋ですが、こういう瞬間はかなり楽しいです。
さらに、休眠から目覚めたトビハゼも確認。
春の干潟が少しずつ動き始めていることを感じました。
一方、大授搦の名物ともいえるシチメンソウは、まだ春なので芽が出たばかり。

秋になると赤く染まるそうですが、今回はその姿を見ることはできませんでした。
季節が変われば、同じ場所でもまったく違う景色になる。
それもまた、干潟の面白さだと思います。
ひがさすで大授搦を学ぶ

鳥見を終え、東よか干潟ビジターセンター「ひがさす」へ。
ここでは、大授搦の自然についてかなり詳しく学ぶことができます。
特に印象に残ったのが、シギ・チドリ類の渡りに関する展示です。

大授搦にやって来る鳥たちが、どこから飛んできて、どこへ向かっていくのか。
普段は目の前の鳥しか見ていませんが、その鳥が大陸や遠くの地域を行き来していることを知ると、見え方が変わります。
また、干潟の生きものが鳥に食べられる側の視点を体験できる展示もあり、なかなかユニークでした。

鳥を見るだけではなく、「鳥に食べられる生きもの」まで含めて干潟を考えられる。
こういう展示があると、鳥と干潟のつながりが分かりやすくなります。
最後にお土産として、お米と海苔も購入。

遠征先では、こういうところで少しでも地域にお金を落としていきたいところです。
案内していただいたNさん親子には、本当に感謝です。
荒尾干潟へ

大授搦を後にして、次は熊本県の荒尾干潟へ向かいます。
ここも非常に広大な干潟です。
そして、やはり潮が引きすぎている。
鳥が遠い。
本当に遠い。
有明海の干潟は、鳥見をする側にも「広さ」という現実を突きつけてきます。
手前で採餌していたツクシガモを眺めながら、荒尾干潟水鳥・湿地センターへ向かいました。
荒尾干潟水鳥・湿地センター

ここでは荒尾干潟の自然だけでなく、有明海で暮らしてきた人々の文化についても学ぶことができます。
特に印象的だったのが、漁や食文化に関する展示です。

アナジャコやムツゴロウなど、干潟に暮らす生きものが、単なる「観察対象」ではなく、地域の食文化として利用されてきたことがよく分かります。
大授搦では鳥と干潟の生態系を強く感じましたが、荒尾では人と干潟との関係を強く感じました。
同じ有明海でも、施設によって見えてくるものが違うのが面白いところです。
スタッフの方から荒尾干潟について詳しく説明していただき、展示だけでは分からない話まで聞くことができました。
こうした現地の方との交流も、遠征では大きな収穫です。
ヘラサギをじっくり観察

外へ出て鳥見を始めると、クロツラヘラサギとヘラサギを発見しました。
特に嬉しかったのがヘラサギ。

私はヘラサギがかなり好きなので、ここで見られたのは大きな収穫です。
嘴を水の中に入れ、左右に振りながら採餌する姿をじっくり観察。
この独特な採餌行動を見るだけで満足できます。
さらに、周囲の電線にはカササギ。

旅行中、何度も見てきた鳥ですが、このときが一番近くで見ることができました。
白と黒の体に光沢のある羽。
何度見ても美しい鳥です。
最後は荒尾干潟へ戻り、夕陽を眺めました。
広大な干潟の向こうへ太陽が沈んでいく光景は、鳥見とはまた違った意味で印象に残ります。
朝から大量の鳥を見て、最後は干潟の夕陽。

有明海を一日かけて堪能したような気分でした。
7日:出水のツル越冬地へ

最終日は、熊本から鹿児島へ移動。
目指すのは、ツルの越冬地として世界的に知られる出水平野です。
昨夜のうちにツル観察センター周辺まで移動して車中泊していたので、朝は日の出とともに活動開始です。
朝から広がるナベヅルの群れ

目を覚ますと、すでにナベヅルの声が聞こえています。
まだ薄暗い時間からツルの声が響いている。
それだけで、ここが普通の鳥見スポットではないことが分かります。
実際に農耕地へ出てみると、そこには大量のナベヅルがいました。
あまりにも数が多く、何羽いるのか分からない。
世界のナベヅルの多くがここで越冬するという話を、実際の風景として見ると、その重要性が一気に実感できます。
一方で、これだけの個体が一か所に集中することによる感染症のリスクも気になります。
「これだけ集まる」ということの凄さと怖さを、同時に感じました。
ソデグロヅルを探す

この年はソデグロヅルが飛来していたため、せっかくなので探してみることに。
すると、車で少し移動したところで、ナベヅルと一緒に採餌している個体を発見しました。
飛翔すれば翼先の黒色部が目立つ鳥ですが、ずっと地上で採餌しているため、その特徴をじっくり見ることはできません。
それでも、個体そのものを見ることができただけで十分です。
世界的に個体数の少ない鳥なので、出水まで来て見ることができたのは大きな収穫でした。
しかも後から聞いた話では、私が観察した翌日に北帰行したそうです。
ギリギリのタイミングだったと思うと、ちょっとした奇跡を感じます。
ツル観察センターからさらに探す

その後、ツル観察センターへ。
屋上から周囲の農耕地を一望し、スコープでほかのツルを探します。
残念ながらマナヅルは見つけられませんでしたが、クロヅルを3羽確認。

時期的に北帰行が始まっているので、種類数が少ないのは仕方ありません。
それでも、目線の高さを飛んでいくナベヅルを何度も見ることができました。
これだけ近くをツルが飛んでいく環境は、普段の鳥見ではなかなかありません。
最後まで「出水に来た」という実感を味わわせてもらいました。
最後のランチと九州旅の終わり

昼食は島津亭へ。
注文したのは「いずみ親子ステーキごはん」です。
出水の鶏肉と鶏卵を使ったご当地グルメで、自分で肉を焼きながら食べるスタイル。
最後の食事まで、しっかり九州らしさを味わうことができました。
その後は帰りの夜行バスに乗るため、小倉へ戻ります。
少し時間があったので、最後にモツ鍋を食べました。
鳥を見て、干潟を見て、ツルを見て、最後はモツ鍋。
九州の要素を可能な限り詰め込んで、今回の旅は終了です。
見られた鳥
今回の旅行では、3日間で73種を確認しました。
| ツクシガモ | オオバン | カササギ |
| オカヨシガモ | タゲリ | ハシボソガラス |
| ヨシガモ | コチドリ | ハシブトガラス |
| ヒドリガモ | シロチドリ | ミヤマガラス |
| マガモ | メダイチドリ | シジュウカラ |
| カルガモ | タシギ | ヒバリ |
| ハシビロガモ | オグロシギ | ツバメ |
| オナガガモ | チュウシャクシギ | イワツバメ |
| コガモ | ダイシャクシギ | ヒヨドリ |
| ホシハジロ | ホウロクシギ | ウグイス |
| キンクロハジロ | アオアシシギ | ムクドリ |
| カイツブリ | クサシギ | ホシムクドリ |
| ハジロカイツブリ | イソシギ | シロハラ |
| キジバト | ハマシギ | ツグミ |
| カワラバト | ズグロカモメ | ジョウビタキ |
| カワウ | カモメ | イソヒヨドリ |
| アオサギ | セグロカモメ | スズメ |
| ダイサギ | オオセグロカモメ | キセキレイ |
| コサギ | ミサゴ | ハクセキレイ |
| ヘラサギ | トビ | セグロセキレイ |
| クロツラヘラサギ | ハイイロチュウヒ | タヒバリ |
| ソデグロヅル | ノスリ | カワラヒワ |
| クロヅル | チョウゲンボウ | ホオジロ |
| ナベヅル | ハヤブサ | 計73種 |
| バン | モズ |
個人的には、もう少し種類を伸ばしたかったところです。
ただ、今回は3月上旬。
ツル類は北帰行が始まり、シギ・チドリ類もまだ本格的な渡来シーズン前でした。
もう少し早ければツルや猛禽類、もう少し遅ければシギ・チドリ類が増えていたはずです。
社会人になってからの遠征では、「行きたい時期に行けない」というもどかしさがあります。
だからこそ、今回のタイミングで見られた鳥たちには、それぞれ意味がありました。
特にソデグロヅルを見た翌日に北帰行したという話には、かなり運命的なものを感じます。
旅行が決まったら!周辺の空室・プランをチェック
遠征や旅行で周辺に宿泊される方は、満室になる前に普段お使いのサイトから空室状況を確認しておくと安心ですよ!
まとめ
今回の九州旅行で強く感じたのは、「同じ日本でも、鳥の見える景色はここまで違うのか」ということでした。
有明海では、普段なら珍しく感じる鳥が大量に集まっています。
ズグロカモメが数百羽。
ハマシギやシロチドリが大群で飛び交う。
ダイシャクシギがまとまって飛来する。
そして、干潟の足元には普段見ることのないアズキカワザンショウがいる。
さらに南へ移動すれば、今度はナベヅルが一面に広がっています。
鳥の種類そのものだけでなく、「その鳥がどれだけいるのか」という視点でも、非常に刺激的な3日間でした。
また、今回の旅では、干潟そのものについても多くを学びました。
鳥がいる。
ベントスがいる。
人がそれを食べる。
漁業や文化が生まれる。
そして、その環境を守るために保全活動が行われている。
有明海は、単に「鳥がたくさんいる場所」ではありません。
生きものと人間の暮らしが複雑につながった、巨大な生態系です。
今回はそのほんの一部を見ただけでした。
季節が変われば、見られる鳥も景色も大きく変わるはずです。
特に、今回はタイミングが合わなかったシギ・チドリ類の渡来期には、もう一度訪れてみたいと思っています。
そして、今回の旅で見ることができなかった鳥にも再挑戦したい。
遠征には、必ず「次に行く理由」が残ります。
だからこそ、鳥見旅行はやめられません。
2泊3日という短い旅でしたが、有明海のスケールと出水のツルの迫力を実際に体感できた、非常に濃密な3日間でした。
また九州へ戻ってきたいと思います。
今度は、もっと鳥が多い季節に。
今回は、格安がテーマなので、気になる方は↓もどうぞ!




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