雨の気配がずっとまとわりついていた和歌山の旅。
2025年6月14日と15日の二日間をまとめると、海から山へ、賑わいから静寂へ――その振れ幅こそが旅の魅力でした。
白浜の活気、高野山の深い静けさ。
対照的な景色に出会いながら、心がその都度やさしく揺れ動いていくような二日間でした。
一日目|白浜エリアをめぐる:動物園、海辺、世界遺産、そして温泉
詳細は、↑をご覧ください。
雨の白浜、それでも旅は始まる
梅雨前線が座り込み、白浜エリア一帯が淡い灰色に包まれた朝。
景色は沈んでも心は沈まず、最初の目的地「アドベンチャーワールド」へ向かいました。
アドベンチャーワールドで動物に浸る
入園早々、入口の噴水でケープペンギンが泳ぐ姿に足が止まりました。

柵なしで間近に眺められる演出に、いきなりテンションが跳ね上がります。
ゾウ、トビ、フクロウ、ハクトウワシ――大きな動物も鳥類も目白押し。
レッサーパンダの愛らしさに頬が緩み、パンダゾーンでは人混みをかき分けながら最後の姿をしっかり刻みました。

ウォーキングサファリでは動物たちの息づかいを感じながら1.5kmを一気に歩ききり、
アニマルアクションではフラミンゴやアシカの動きに笑みがこぼれる時間。

海獣館ではコウテイペンギンという希少な存在にも出会い、雨の朝を忘れるほどの充実感が残りました。
とれとれ市場で豪華ランチ

観光のあとは腹ごしらえを。
クエが泳ぐ大きな生簀、目の前で繰り広げられるマグロ解体ショーに目が奪われます。
選んだのは「カタタ丼」。

鯛とハマチの漬けに山芋、ウズラ卵がとろっと絡み、想像以上のボリュームと満足度。

名物「踊りだこ」のたこ焼きは、丸ごと入ったイイダコの存在感がすさまじく、旅の勢いをそのまま口いっぱいに感じました。
雨の天神崎――それでも美しい

続いて“和歌山のウユニ塩湖”と称される天神崎へ。
雨脚が強まり、ゆっくり歩く余裕はありませんでしたが、潮の香りと湿った空気が独特の静けさをまとい、雨の日ならではの風景に出会えました。
鬪雞神社で歴史と向き合う

田辺市の鬪雞神社では、平家物語の一節がそのまま息づくような世界。
紅白の鶏の故事、義経や弁慶の伝承が立ち上がってくる境内の空気は、程よく緊張感を帯びていました。

とれとれの湯で温まる

観光続きの身体を温泉でほぐします。
白浜温泉の源泉を贅沢に使った湯に浸かっていると、雨の冷たさすら「旅の味」と思えてくるほど。
湯上がりに休憩室で軽くまどろむ時間が、心身のいい切り替えになりました。
道の駅 ごまさんスカイタワーで車中泊
夜は標高1,040mの涼しさに包まれる「道の駅 ごまさんスカイタワー」へ。
山の静けさと展望塔からの絶景が、白浜の賑わいを遠景に変えていくようでした。
二日目|霧がよく似合う高野山を歩く
詳細は、↑をご覧ください。
山の朝、思わぬ“洗礼”
早朝、「ごまさんスカイタワー」を出発。
奥の院へ向かう道で倒木に遭遇し、対向車の方と協力して撤去することに。

ずしりと動かない木も、二方向から力を込めれば少しずつ動き出す。
最後に道の端へ寄せた瞬間、小さな達成感がふっと胸に灯りました。
奥の院 ― 深い静けさと祈り

霧と雨に包まれた杉木立。
20万基を超える墓碑が並ぶ約2kmの参道は、歴史の重みを静かに語り続けていました。
御供所を過ぎ、御廟橋を渡った瞬間、空気が変わります。

ここから先は撮影禁止の聖域。
自分の呼吸と足音だけが静かに積み重なっていくような、言葉のいらない空間でした。
英霊殿、崇源夫人五輪塔へと歩みを進めると、細雨が石肌を淡く濡らし、塔の存在感を強めていく景色に吸い込まれます。

昨年訪れた姫路城の記憶とつながる場所でもあり、旅の縦軸が一本すっと通るような感覚がありました。
大門 ― 霧に浮かぶ朱色

大門へ向かう道では、霧の向こうに朱色がゆらりと浮かび上がる光景が印象的でした。
すべて見えない、しかし確かにそこにある――その曖昧さが美しく映ります。
角濱ごまとうふ総本舗の胎蔵懐石

昼食は大門すぐの「角濱ごまとうふ総本舗」で胎蔵懐石をいただきました。

香りの立つごまどうふを中心に、焼きどうふ、白和え、飛龍頭、きのこソースなどの品々が並びます。
特に白和えは、驚くほど滑らかで、まさにクリームのような口当たり。
静かな高野山の空気ともよく馴染む優しい味でした。
壇上伽藍 ― 密教の世界観が形になる場所

食後は伽藍へ。
2015年再建の中門では四天王像が鋭い視線をこちらへ投げかけ、霧と朱色が混ざり合う金堂の姿が静かに佇みます。
根本大塔は象徴的存在として強烈な印象を残し、大塔の鐘の深い響きが身体の芯まで届くようでした。

六角経蔵では順番を待ちながら一周を回し、功徳を得る体験も。
御社、西塔へと歩くにつれ、人の気配が薄れ、深呼吸したくなるほど澄んだ空気が広がっていきます。
青葉まつりに遭遇する

伽藍を抜けて道路に出たところで、ちょうど青葉まつりの行列に遭遇。
信仰の日常が垣間見える瞬間で、旅に思わぬ彩りを添えてくれました。
金剛峯寺 ― 総本山の静かな緊張感

旅の終盤に訪れた金剛峯寺。
本坊正門の檜皮葺きの屋根、歴史を抱え込むような柱。
その落ち着いた佇まいが、歩幅を自然と整えてくれるようでした。
主殿へ進むと、大広間や上段の間が連なる内部空間に静かな緊張感が漂います。

そして、日本最大級の石庭「蟠龍庭」。
白砂のうねりが雨に濡れ、新緑と溶け合う姿は圧巻そのものでした。
旅の締めくくり ― 情報センターで“答え合わせ”

金剛峯寺を出た後、高野山大師教会を見学し、最後に訪れたのは高野山観光情報センター。
本来なら旅の最初に来るべき場所ですが、終盤に訪れたことで、今日歩いた場所の意味が綺麗に整理されていく感覚がありました。
“順番を間違えた”という事実が、逆に旅の余白になった一幕です。
おわりに|海と山、賑わいと静寂。二日間の重なり
白浜の明るさと高野山の静けさ。
両極端に揺れるような旅でしたが、だからこそ記憶に深く刻まれた二日間でもあります。
天気は雨続きでしたが、景色はその分しっとりと色づき、動物、海の香り、温泉の湯気、霧の寺院。
すべてが柔らかくつながっていきました。
今回の旅で得た感覚は、きっとしばらく残り続けると思います。




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