冬になると、日本には多くのカモ類が飛来します。
カモ類は開けた水上でゆっくりと活動しているため、観察するのに最適な鳥です。
冬にバードウォッチングを始める方は、身近なカモ類から覚えましょう。
記事の信頼性
私は2013年から鳥を見始めています。
Instagramで鳥に関する発信をし、1万人以上のフォロワーを獲得しました。
そもそもカモってどんな鳥?
まずはカモ類の基礎知識を紹介します。
カモ類とは?
カモ類はカモ目カモ科に属する鳥。
バードウォッチャーが単に”カモ”という時は、ガン類,ハクチョウ類を含まない場合が多いです。
体が大きく水辺で出会いやすいため、初心者がバードウォッチングを初めるにはうってつけの鳥になります。
メスは難しい
オスは派手な見た目をしていますが、メスは地味な見た目のものが多いです。
そのため、メスの識別に苦手意識を持つ人は多くいらっしゃいます。
私も初めたての頃は大苦戦でした…。
そのため、まずはオスのカモを覚えるところから始めましょう。
大きく分けると2種類
カモ類を大きく分けると、2つのタイプに分けることができます。
その2つとは、水面採餌ガモと潜水ガモです。
といいつつも、水面採餌ガモが潜水することもあるし、潜水ガモが水面で餌を取ることもあります。
カルガモ
学名 | Anas zonorhyncha |
全長 | 58-63cm |
渡来時期 | 通年 |
採餌方式 | 水面採餌 |
日本で見られるカモの中で、最も身近なカモです。
春や夏でも普通に見られ、ディズニーランドでも繁殖が確認されています。
雌雄に大きな違いが見られず、茶色い鱗模様のボディと嘴先端の黄色が特徴的です。
通年見られることから渡らない鳥と思われがちですが、渡らないと言い切ることはできません。
北海道では主に夏鳥に該当し、関東で標識されたカルガモが東北や北海道で確認されています。
オカヨシガモ
学名 | Mareca strepera |
全長 | 45-57cm |
渡来時期 | 10-3月 |
採餌方式 | 水面採餌 |
全身が灰色で黒いお尻の羽が特徴的なカモ。
よく”地味な鳥”と言われていますが、それは違います。
太陽に照らされて鈍く光る様は、まさに燻し銀!
鳥の中でも、トップクラスに渋くてカッコ良いです。
バードウォッチングを始めたばかりだと、何かのメスのカモと勘違いしてスルーしてしまう人も多いので、注意して観察しましょう。
ヨシガモ
学名 | Anas falcata |
全長 | 46-54cm |
渡来時期 | 9-5月 |
採餌方式 | 水面採餌 |
緑と茶色の美しい顔と、腰のあたりから生えるカールを描いた羽が特徴的なカモです。
オスの頭部は扁平で、ナポレオンの帽子を縦にかぶっているように見えることから、”ナポレオンハットを持つカモ”と呼ばれることもあります。
ヒドリガモ
学名 | Anas penelope |
全長 | 42-50cm |
渡来時期 | 9-5月 |
採餌方式 | 水面採餌 |
クリーム色のおでこと赤い顔が特徴的なカモ。
陸でも餌を取ることが多く、河川敷などで陸上に生える植物を食べます。
また、アメリカヒドリと交雑している個体が多いです。
顔に緑の模様が浮き出たり、顔の赤みが薄かったりと様々な個体がいます。
マガモ
学名 | Anas platyrhynchos |
全長 | 50-60cm |
渡来時期 | 9-4月 |
採餌方式 | 水面採餌 |
緑色の顔に黄色い嘴、そして白いボディと目立つ要素を多く兼ね備えたカモ。
分布域が広く個体数も多いため、とりあえず水辺に行けば出会えます。
しかし、古くから狩猟の対象になっているせいか分かりませんが、意外と警戒心が強いです。
植物で姿を隠しやすい場所や、そもそも人があまり近付かない場所を好みます。
ちなみに、アヒルの原種です。
ハシビロガモ
学名 | Anas clypeata |
全長 | 44-52cm |
渡来時期 | 9-5月 |
採餌方式 | 水面採餌 |
嘴が大きく、暗めな緑の顔が特徴的なカモ。
遠目で見ると、白いボデイが最初に目に入ることが多いです。
”ハシビロ”とは嘴が広いという意味で、雌雄ともに嘴は扁平状に広がっています。
ハシビロガモといえば、集団で水面を回転する行動が有名です。
渦を作ってプランクトンや藻を巻き上げ、それらを集めて餌を食べます。
これを私は「ハシビロ銀河」と言っていますが、呼び方は人によって様々です。
単に「集団採餌」や「くるくる採餌」と呼んでいる人もいます。
オナガガモ
学名 | Anas acuta |
全長 | 51-76cm |
渡来時期 | 9-4月 |
採餌方式 | 水面採餌 |
オナガガモは茶色い頭と白い胸、そして長い尾羽が特徴的なカモです。
尾羽の特徴はメスにも見られ、メスのカモの中では識別を容易にできます。
警戒心が他のカモよりも薄く、間近で観察することも可能です。
メスの識別を頑張りたい時は、オナガガモから始めてみると良いかもしれません。
コガモ
学名 | Anas crecca |
全長 | 34-38cm |
渡来時期 | 9-5月 |
採餌方式 | 水面採餌 |
コガモは緑のアイマスクと赤い顔が特徴的なカモです。
遠目で見ると、白いお尻も目立ちます。
また、淡水を好むカモの中で最小級です。
他のカモと比較しても明らかに小さいので、意外とすぐに分かります。
他のカモよりも渡ってくるのが早いため、コガモを見かけると秋らしさを感じられるのも特徴です。
ホシハジロ
学名 | Aythya ferina |
全長 | 42-49cm |
渡来時期 | 9-4月 |
採餌方式 | 潜水 |
ホシハジロは赤い頭と目、白い体が特徴的なカモです。
次に紹介するキンクロハジロと一緒にいることが多く、頻繁に潜水する姿を観察することができます。
潜水ガモの多くは動物食の強い雑食ですが、ホシハジロは植物食の強い雑食です。
おまけに潜る深度も浅く、田んぼで潜水する姿も観察されています。
どんぐりを咥えて泳ぐホシハジロは、かなり可愛いですよ!
キンクロハジロ
学名 | Aythya fuligula |
全長 | 40-47cm |
渡来時期 | 9-4月 |
採餌方式 | 潜水 |
キンクロハジロは、モノクロカラーとちょんまげのような冠羽が特徴的なカモです。
小さいですが、メスにもちょんまげのような羽が生えています。
ポニーテールと呼んだ方が適切でしょうか…?
ちなみに、ちょんまげが後頭部にくっついて目立たないことがあります。
そのため、ちょんまげの有無だけで識別せずに、お腹の白と背中の黒をしっかり覚えておくのがポイントです。
スズガモ
学名 | Aythya marila |
全長 | 42-51cm |
渡来時期 | 10-4月 |
採餌方式 | 潜水 |
スズガモは緑の光沢がある黒い顔が特徴的なカモです。
また、キンクロハジロと間違われやすいカモでもあります。
キンクロハジロが”お腹:白,背中:黒”なのに対し、スズガモは”お腹:白,背中:白黒”です。
背中の白黒は、マックフルーリーのオレオと表現した方が良いかもしれません。
海にいることがほとんどで、大規模な群れを作っていることもあります。
1000羽を超えることも珍しくありません。
カモの観察に慣れてきたら、スズガモの群れの中に珍しいカモがいないか探してみてください。
ミコアイサ
学名 | Mergellus albellus |
全長 | 38-44cm |
渡来時期 | 11-3月 |
採餌方式 | 潜水 |
ミコアイサは、パンダのような顔が特徴的なカモです。
白を基調とした全身が、巫女の白装束に似ているからミコアイサと言われています。
他のカモと比較すると、警戒心が非常に強いです。
人が近くに来ると、すぐに反対方向へ逃げてしまいます。
距離をとって観察するのが重要です。
おまけ:ツクシガモ
学名 | Tadorna tadorna |
全長 | 56-65cm |
渡来時期 | 12-4月 |
採餌方式 | 水面採餌 |
九州に多く飛来するカモなので、おまけとして紹介します。
ツクシガモは、黒い頭,赤い嘴,白い体が特徴的なカモです。
九州への飛来が多いのは間違いないですが、各地で少数が記録されています。
意外な場所で見かけることがあるので、余力があれば覚えておきましょう!
最後に
カモは多くのバードウォッチャーにとって、長い付き合いになる鳥です。
鳥を見慣れてくるとメスの識別はもちろん、珍ガモ,別の亜種,雑種,白化個体といった、特殊なカモを見たくなってきます。
いつどんな場所で、変なカモに出会えるのか分かりません。
そんなカモに出会うためにも、識別の鍛錬あるのみです!
参考文献
氏原巨雄・氏原道昭(2020)決定版 日本のカモ識別図鑑.株式会社誠文堂新光社
叶内拓哉(2017)フィールド図鑑 日本の野鳥.株式会社文一総合出版
櫻井佳明(2022)基本のカモ図鑑.月刊 BIRDER 第36巻第12号:20ー27.株式会社文一総合出版
真木広造・大西敏一・五百澤日丸(2014)決定版 日本の野鳥.株式会社平凡社
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