【初心者必見 ! 】鳥の渡り区分とは?

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バードウォッチングをする上で、鳥の渡り区分は非常に重要です。

初心者や曖昧な人は、これを機にぜひ覚えましょう!

記事の信頼性

私は2013年から鳥を見始めています。
Instagramで鳥に関する発信をし、1万人以上のフォロワーを獲得しました。

渡りとは?

ハマシギの群れ

渡りとは、一定の周期によって生きものが移動することです。

ツバメを例に説明します。

ツバメの渡り

ツバメは春に日本へ飛来して、春から夏にかけて繁殖します。

その後、秋ごろにマレーシアをはじめとする東南アジアに冬を越すために移動。

そして、春になるとツバメは日本に向けて旅立ちます。

このように、一定の周期によって生きものが移動することが渡りです。

渡りは鳥の特権じゃない

渡りを行う生きもの

渡りといえば、鳥を思い浮かべますよね。

実際に、渡りの代名詞は鳥だと私もそう思います。

しかし、渡りをするのは鳥だけではありません

ザトウクジラとブリを例にして、説明します。

ザトウクジラ
回遊するザトウクジラ

日本人に最も身近な渡りをする哺乳類は鯨類でしょう。

ザトウクジラは夏にロシアやアラスカなどで餌を食べて、冬になると繁殖のためにハワイや小笠原諸島、沖縄県などに移動します。

ブリ
回遊するブリ

魚類も、海で生活する多くの種類が渡りをします。

ブリは春から夏にかけて、九州沿岸からオホーツク海沿岸まで移動。

秋になると産卵のため、九州沿岸へ移動です。

これらのように、水中で生活する生きものの渡りは一般的に”回遊”と呼ばれています。

鳥の渡り区分とは?

鳥の渡り区分

渡り区分とは、鳥を移動に注目して分けたものです。

鳥は夏鳥,冬鳥,旅鳥,漂鳥,留鳥の5つに分けることができ、夏鳥,冬鳥,旅鳥が一般的に渡り鳥と言われています。

それらに加えて、渡り区分には含まれない”迷鳥”も紹介しますね。

順番に見ていきましょう。

夏鳥

夏鳥のサシバ

夏鳥とは、繁殖のために春から初夏に日本へ飛来する鳥のことです。

例を挙げると、サシバ,ツバメ,オオルリなどが当てはまります。

夏鳥は繁殖のために飛来するということもあり、美しいさえずりを聞くことができたり、夏羽と呼ばれる繁殖期特有の羽を全身にまとって美しい姿を観察したりすることが可能です。

何かと鳥に癒される時期ですが、繁殖中の鳥は警戒心が非常に強くなります。

繁殖している鳥の観察や撮影は控えるようにしましょう。

野鳥撮影のマナーはこちら

冬鳥

冬鳥のオオハクチョウ

冬鳥とは、冬を越すために秋から冬に日本へ飛来する鳥のことです。

例を挙げると、ズグロカモメ、ジョウビタキ、オオハクチョウなどが当てはまります。

また、冬は鳥を観察しやすいので、バードウォッチングを始めるのに最適な時期です。

その理由は2つあります。

1. 水鳥が多い
冬鳥のハシビロガモ

冬鳥の代表格と言えば、カモ類でしょう。

カモの仲間は水上でも陸上でもゆったりしていることが多いので、観察に最適です。

2. 葉っぱが落ちている
冬に観察しやすいジョウビタキ

木の上では小鳥が素早く移動しているので、葉っぱがあると非常に観察しにくいです。

しかし、冬は葉っぱを落としている木も多いので、小鳥の観察に向いています。

旅鳥

旅鳥のウズラシギ

旅鳥とは、渡りの途中で日本に立ち寄る鳥です。

旅鳥の例として、ウズラシギ、エゾビタキ、クロハラアジサシなどが挙げられます。

旅鳥の中でも、代表格と言えるのがシギ,チドリの仲間(以下、シギチ)。

長距離を渡ることで知られており、1万km以上も飛行する種類もあります。

春と秋にシギチが日本へ多く飛来するため、世界を股にかける彼らをぜひ観察しに行きましょう。

漂鳥

漂鳥のキセキレイ

漂鳥とは、繁殖を山地,越冬を平地でし、日本国内を移動する鳥です。

漂鳥の例として、キセキレイ,ウグイス,ヒヨドリなどが挙げられます。

このように言葉で説明するのは簡単ですが、漂鳥には注意が必要です。

漂鳥の注意点

下図のように同じ種類の鳥でも、生息地によっては留鳥の個体も存在します。

実態が明らかになっていないため、図鑑の中には「留鳥、または漂鳥」と表記されることが多いです。

また、漂鳥の用語を避けている図鑑もあります。

留鳥

留鳥のメジロ

留鳥とは、移動せずその地で繁殖し、その地で越冬する鳥です。

留鳥の例として、キジ,メジロ,スズメなどが挙げられます。

しかし、留鳥と言っても移動しないわけではありません。

スズメを例に説明します。

スズメの移動
長距離を移動するスズメ

スズメは一般的に留鳥として知られています。

長距離を移動しているイメージを持っている人は少ないでしょう。

しかし、鳥類標識調査によって、スズメでも長距離を移動する個体がいることが分かりました。

長距離といっても、新潟県から関東地方や東海地方の沿岸部なので、旅鳥で紹介したシギチの1万kmと比べると短いですが…

それでも、留鳥のイメージを壊す距離であるのは間違いありません。

ちなみに、新潟県から移動したスズメの多くは幼い個体なので、繁殖地から分散したのではないかと考えられています。

※鳥類標識調査とは…

野生の鳥に個体識別のための足環などを装着して放鳥し、再捕獲や観察によって情報を収集、解析することによって、鳥類の渡りの実態や様々な生態を明らかにし、鳥類の保全施策やそのための国際協力の推進に役立てる調査。

https://www.biodic.go.jp/banding/

このように留鳥といっても漂鳥だったり、長距離移動したりするので、”この鳥は完全に留鳥である”と言い切るのは難しいです。

また、留鳥の皮をかぶった渡り鳥も存在します。

留鳥はその地で繁殖し、その地で越冬する鳥です。

つまり、一年を通して見られる鳥ということになります。

しかし、一年中見られる鳥🟰留鳥ではありません‼️

話を紛らわしくしている、ダイサギの紹介をします。

留鳥の皮をかぶった渡り鳥 ダイサギ
ダイサギの渡り

ダイサギは一年を通して、河川や海辺などで観察することのできる鳥です。

日本に飛来するダイサギには2つの亜種が存在し、

亜種チュウダイサギ亜種ダイサギと呼ばれています。

亜種とは、同じ種でも分布する地域によって大きさや色といった部分的な違いがあり、地域間で差異が確認された集団のことです。

亜種チュウダイサギ繁殖のため、亜種ダイサギ越冬のために日本へ飛来。

この2つの亜種のダイサギが渡りを行うことで、ダイサギを一年中見ることができます。

迷鳥

迷鳥のダルマエナガ

迷鳥とは、台風や強風といった特殊な状況により、本来の生息地から飛ばされてしまった鳥です。

迷鳥の例として、ダルマエナガやハクトウワシなどが当てはまります。

こういった鳥を、自力で見つけられるようになりたいですね!

まとめ

以上6つが鳥の渡り区分です。

簡単におさらいしましょう。

  • 夏鳥…繁殖のために春から初夏に日本へ飛来する鳥
  • 冬鳥…冬を越すために秋から冬に日本へ飛来する
  • 旅鳥…渡りの途中で日本に立ち寄る鳥
  • 漂鳥…繁殖を山地,越冬を平地でし、日本国内を移動する鳥
  • 留鳥…移動せずその地で繁殖し、その地で越冬する鳥
  • 迷鳥…特殊な状況により、本来の生息地から飛ばされてしまった

「留鳥」で説明した通り、必ずしも「その鳥=◯鳥」となるわけではありません。

ツバメを例に説明します。

ツバメは一般的に夏鳥とされていますが、日本海側の離島南西諸島では冬鳥です。

さらに、本州で越冬するツバメもいます。

このように、日本国内でも場所によって渡り区分が異なったり、一般的ではない行動を示す個体もいたりするものです。

また、夏鳥や冬鳥でも日本国内で渡りを完結する鳥もいます。

そのため、図鑑によって夏鳥,冬鳥,漂鳥といった用語の定義が微妙に異なることがあるので、注意が必要です。

というわけで、記事は以上になります。

この記事を書くにあたって、参考にした書籍を以下に記しておきますね。

参考文献

叶内拓哉(2017)フィールド図鑑 日本の野鳥.株式会社文一総合出版

叶内拓哉・安部直哉・上田秀雄(2011)増補改訂新版 日本の野鳥.株式会社山と溪谷社

真木広造・大西敏一・五百澤日丸(2014)決定版 日本の野鳥.株式会社平凡社

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