テレビのニュースやSNSでラムサール条約を見聞きするけど、どんな条約か分からない!!
そんな方も多いのではないでしょうか?
簡単に説明すると…
湿地の重要性を認識し、それを保護するための国際的な取り決めです。
より詳細に知りたい方は、以下もご覧ください。
ラムサール条約の正式名称
ラムサール条約と耳にすることが多いですが、これは通称です。
正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいます。
ラムサールのラの字もないじゃん!!と思われるかもしれませんが、これは国際会議の開催地が由来です。
1971年2月2日にイランのラムサールで採択されたため、ラムサール条約と呼ばれるようになりました。
ちなみに、イランの公用語はペルシャ語です。
ラムサールはペルシャ語で「رامسر (Rāmsar)」と呼ばれており、発音的には「ラームサル」が正解となります。
ここまで来て、「ラームサル条約」に修正されることはないと思いますがね…笑
ラムサール条約の目的
湿地はあらゆる生きものにとって、重要な場所です。
繁殖や渡りの中継など様々なことに利用され、複雑な生態系を形成しています。
ラムサール条約は、そんな重要な場所を保全し、湿地を賢明に利用することを進めるのが目的です。
一言で目的を言い表すならこれで十分ですが、より深く理解するためには基盤となる3つの柱を知っておかなければなりません。
その3つの柱は以下の通りです。
保全(・再生),ワイズユース(賢明な利用),交流、学習(CEPA)
順に説明します。
基盤となる3つの柱
ラムサール条約の基盤となる、3つの柱を紹介します。
保全(・再生)とは?
生きものの生息地及び、我々の生活を支える場として、保全・再生することを目的としています。
人の生活と湿地が結びつきにくいですが、湿地は陰ながら我々の生活を支えている存在です。
ゲリラ豪雨や洪水が発生した際に水を吸ったり、効率的に炭素を吸収したりなど湿地の役割は様々あります。
私がよく足を運ぶ湿地である干潟では、水を浄化することが可能です。
ワイズユース(賢明な利用)とは?
湿地の資源を現世代および将来の世代が、持続可能に利用できるようにすることが目的です。
ここでいう利用とは、漁業などの産業はもちろん、バードウォッチングなどの文化的な利用も含まれています。
交流、学習(CEPA)とは?
湿地の保全に関して国際的な連携と協力を図り、情報交換や技術的支援を目的としています。
ちなみに()の中のCEPAとは、下記のイニシャルからとった略称です。
- Communication(交流)
- Capacity building(能力養成)
- Education(学習)
- Participation and Awareness(参加と普及啓発)
CCEPAでも良い気がしますが、「CEPA」で浸透しています。
ラムサール条約に登録できる条件
全ての湿地をラムサール条約に登録できるわけではありません。
国際的に重要な湿地を登録するわけですから、適当には決められないのです。
登録するための国際的な基準と、日本での登録条件を紹介します。
国際的な基準
国際的な基準は、以下の通りです。
基準1:特定の生物地理区内で代表的、希少、または固有の湿地タイプを含む湿地
基準2:絶滅のおそれのある種や群集を支えている湿地
基準3:特定の生物地理区における生物多様性の維持に重要な動植物を支えている湿地
基準4:動植物のライフサイクルの重要な段階を支えている湿地。または悪条件の期間中に動植物の避難場所となる湿地
基準5:定期的に2万羽以上の水鳥を支えている湿地
基準6:水鳥の1種または1亜種の個体群の個体数の1%以上を定期的に支えている湿地
基準7:固有な魚類の亜種、種、科、魚類の生活史の諸段階、種間相互作用、湿地の価値を代表するような個体群の相当な割合を支えており、それによって世界の生物多様性に貢献している湿地
基準8:魚類の食物源、産卵場、稚魚の生息場として重要な湿地。あるいは湿地内外の漁業資源の重要な回遊経路となっている湿地
基準9:鳥類以外の湿地に依存する動物の種または亜種の個体群の個体数の1%以上を定期的に支えている湿地
環境省 ラムサール条約と条約湿地
上記の基準の、いずれかを満たさないと登録できません。
日本の登録条件
国際的な基準をクリアすればOK!!
・・・というわけではありません。
日本では、次の3つの条件をクリアしないといけません。
条件1:国際的に重要な湿地であること(国際的な基準のうちいずれかに該当すること)
条件2:国の法律(自然公園法、鳥獣保護管理法など)により、将来にわたって、自然環境の保全が図られること
条件3:地元住民などから登録への賛意が得られること
環境省 ラムサール条約と条約湿地
どんなに良い場所でも、開発計画があると登録は難しいと言わざるを得ません。
湿地の定義
ラムサール条約における湿地は、以下のように定義されています。
湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、
永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、
更には水が滞つているか流れているか、
淡水であるか汽水であるか鹹水であるかを問わず、
沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、
低潮時における水深が六メートルを超えない海域を含む。
特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約 第一条 1
かなり幅広い範囲の場を、湿地として定義されています。
名蔵アンパルのようなマングローブ林から、出水ツルの越冬地のような平地まで、日本でも様々な環境のラムサール条約登録湿地を見ることが可能です。
ラムサール条約の歴史
ラムサール条約の歴史と、日本の取り組みについて簡単に紹介します。
- 1950年代湿地の開発と消失の弊害
湿地は役に立たない地と認識されており、干拓等によって消失
洪水や湿地に生息する動植物の消失が発生
- 1960年代始め危機感の強まり
湿地の重要性を唱える人々により、国際条約の必要性を訴えた
このときから、国境を越える渡り鳥の性質もよく理解されていた
- 1963年水禽保護に関する最初のヨーロッパ会議
科学者,狩猟者,政府当局が強力し、ヨーロッパ会議が開催された
※水禽:水上生活する鳥のこと(カモ類やカモメ類など) - 1965年国際水禽湿地調査局(IWRB)による国際条約の提案
水禽だけでなく、湿地保全にも重きを置いた国際条約が提案された
※国際水禽湿地調査局(IWRB)は1996年に国際湿地連合(Wetlands International)に改名 - 1963〜1971年国際条約の草案作り
オランダ政府が中心となり、国際条約の草案作りを開始
会議,討議を何度も行い、8年以上の年月がかかった
- 1971年ラムサールで国際会議が開催
イラン政府の招待により、ラムサールで国際会議が開催された
世界18カ国の代表が協定に調印
ラムサール条約が誕生した
- 1975年ラムサール条約の発効
- 1977年国際水禽湿地調査局(IWRB)の日本委員会設立
- 1980年日本がラムサール条約に加盟
釧路湿原を登録した
- 1982年条項手続に関する規定を追加
ラムサール条約の制定当初、条項の改正手続に関する規定がなかった
それを加える旨を規定した「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約を改正する議定書」を作成
- 2023年ラムサール条約の締約国は172カ国になった
登録湿地数は2,493箇所,日本は53箇所
ラムサール条約による規制
ラムサール条約自体に、規制などはありません。
しかし、日本の湿地をラムサール条約に登録する場合、国の法律によって自然環境の保全が図られることとなっています。
ここでいう国の法律とは、自然公園法や鳥獣保護管理法などです。
これらを適用するために、登録される湿地には・・・
国指定鳥獣保護区の特別保護区,国立公園,国定公園
に指定され、保全,管理が行われます。
これらの法や場所には規制があるので、それらに違反してはなりません。
ちなみに鳥獣保護管理法については、↓を参照にしてください。
まとめ
この記事をまとめると、以下の通りです。
- ラムサール条約はとは
- ラムサール条約の正式名称
- 目的は、保全,賢明な利用,CEPA
- ラムサール条約に登録するための基準
- 1971年にラムサール条約誕生
- ラムサール条約自体に規制はない
以上です。
自分が住んでいる周辺にラムサール条約登録湿地がないか、ぜひ調べてみましょう!!
そして、足を運んでみてください。
それぞれに歴史があり、特色があるので良い勉強になるはずです。
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